Culture

2024.05.17

【ブランディング座談会】なぜクジラは渋谷の空を泳ぐのか

2024年4月、私たちfree movaはブランディングに伴うサイトリニューアルを行いました。ブランディングをお任せしたのは、創業期から採用をご支援いただいているオールイン株式会社様。代表取締役の前田様をお迎えし、free movaの廣瀬・米山と共に今回のプロジェクトを振り返っていただきました。

株式会社free mova 取締役副社長/米山 大貴
株式会社free mova 代表取締役社長/廣瀬 暁己
オールイン株式会社 代表取締役/前田 優一様
(以下敬称略)

■ブランディングなんて必要ないと思っていた

前田:コーポレートサイトと採用サイトがようやく完成しました。初回のキックオフからリリースまで約1年を要しましたが、数年単位でプロジェクトが動いていたような気もしています。

廣瀬:前田さん、ずっと言ってましたからね。ブランディングした方がいいですよって。

米山:オールインさんには創業期から求人広告の制作をお願いしてるんですけど、その頃から言ってました。うるさいくらいに(笑)。

(株式会社free mova 代表取締役社長/廣瀬 暁己)

廣瀬:創業後は人数を増やすことにがむしゃらで、ブランディングの必要性を全く感じていませんでした。勢いとやる気さえあればどうにでもなると。最初のコーポレートサイトなんて社内で作りましたから。

米山:まずは会社をデカくしたいという思いが大きかったので、オールインさんには採用支援に注力してもらっていました。当時は本厚木にオフィスがあり、立地的に集客は難しいと考えていたので、初回の媒体掲載で3名採用できたときは驚きましたね。その次に2つの媒体に同時掲載したら、13名も採用できて。当時採用した社員たちは今も主軸を担ってくれています。

前田:創業したばかりの企業でこれだけの大型採用に成功したケースは、他に類を見ません。ただ、採用を通して事業の急拡大をサポートする一方で、free movaさんのブランドを確立させたいと考えていました。ある程度のところまでは2人のパッションでカバーできたとしても、そこから先に進むためには、急拡大を支える屋台骨を組み立て、会社としての求心力を生み出す必要があります。自分たちが何者で、世の中に対して何を約束するのかを明文化させるタイミングが近い将来に必ず訪れると思っていました。

廣瀬:「枠にとらわれない人生を」というワードは創業期から掲げていましたが、MVVは明確に策定していませんでした。とは言え、前田さんからはブランディングを勧められていたものの、今すぐにやった方がいいという温度感ではなくて。

前田:そうですね。事業が伸びていくどこかの過程で壁として現れると思っていたので、来るべき日に備えて頭に入れておいてもらうことが狙いでした。

(株式会社free mova 取締役副社長/米山 大貴)

米山:前田さんが刷り込んでくれていたので、頭の片隅にずっとありました。前田さんから言われていなければ、ブランディングをやろうなんて思わなかったでしょうね。従業員数が100名を超えた頃から、「free movaさん伸びてますね」とまわりから言われることが増えてきて、今後大手企業と戦っていくためには見せ方を考えるべきだと思うようになりました。

廣瀬:従業員数が100名を超えたのはひとつのボーダーになったと思います。300名、500名への拡大を考え始めたときに、他社のサイトをチェックするようになりました。会社としての見せ方に意識が向き始めたんでしょうね。

前田:いいなと思うサイトをいくつか共有してもらったのですが、業種関係なく、どの会社も自分たちのアイデンティティをしっかりと確立されていました。潜在的にブランディングを意識していたからこそ、そういったサイトがアンテナに引っ掛かったのだと思います。

■想像の90度上を行く

(オールイン株式会社 代表取締役/前田 優一様)

前田:当時お二人はfree movaという会社をどのように見せたいと考えていましたか?

廣瀬:令和の新しい会社ですね。

米山:全く同じです。何か変わった見せ方をしたいと考えていたのですが、実はその頃、メンバーのひとりがWebサイトのリニューアルを別軸で進めていて。

前田:キックオフも済んでいたっていう。

米山:提案資料を読んだのですが、私たちの本質を理解してもらっていない印象を受けました。果たしてこれで他社と差別化できるのかなと。そこで自分たちにしかないものを考えたときに思い浮かんだのが、TikTokにアップした「2m社長シリーズ」の動画です。

(2 m社長をコンセプトに様々な動画を展開)

前田:あれはバズりましたね。どれくらい再生されたんでしたっけ?

廣瀬:バズった動画を合算すると、1年間で3000万再生くらいです。影響力は大きくて、求職者からのエントリーもSNS経由で舞い込むようになりました。

米山:「2m社長シリーズ」のような他とは違う取り組みこそが自分たちらしさだと思っています。ブランディングにおいても独自性を追求したいと考えていました。

前田:設立5年で、従業員数500名ですからね。この異形感は、オーソドックスなアプローチでは表現できません。

廣瀬:オールインさんに期待していたのも、まさにそこですね。求人広告の制作を依頼する際、毎回企画を3つくらい提案してもらってるんですけど、どれも面白くて。うちのことを深く理解してもらった上で、テンプレートではないアイデアを出してくれていました。

米山:想像の45度上ではなく、90度上を行ってくれるっていう。現実離れしてるなと思う企画もありましたけど、そこも含めて面白さを感じていました。

■膨大な情報量からストーリーを紡ぎ出す

前田:キックオフで顔合わせを行った後は、1ヶ月に及ぶヒアリングを行いました。お二人を含めたfree movaさんのメンバー7名、さらには取引先の担当者様からお伺いした内容は、MVVやキービジュアルを作り込んでいく上で重要な土台になったと思います。最初のプレゼンを受けたときの印象は覚えてますか?

米山:資料を受け取った瞬間、「また変なの持って来たな」って思いました。分厚さが想像を超えていて。

前田:そこですか(笑)。

廣瀬:異様に分厚かった。あれ何ページあったんですか?

前田:154ページですね。

廣瀬:いざプレゼンされてみると、3C分析を通してfree movaという会社が丁寧に紐解かれていました。「うちのことをここまで考えてくれているんだ」っていう思いが込み上げてきて、とても嬉しかったですね。

米山:こちらからは事前に要望を出していなかったのですが、「その通りだな」って思いながらプレゼンを聞いていたことを覚えています。実は自分たちでもMVVを考えたことがあって、バリューは100個くらい出てきたんですけど、どれもしっくり来なかったんです。

廣瀬:文章の羅列って感じで、コンパクトにまとまっていなかったよね。ミッションとして提案してもらった「まだ見ぬ場所に、連れて行く。」なんて簡単そうに見えるけど、自分たちでは絶対に出てこない。

前田:「まだ見ぬ場所に、一緒に行こう。」じゃないんですよね。ヒアリングを通して感じたのが、入社前に予想もしていなかった未来に皆さんが立っているということです。もちろん皆さんの意思も介在しているんですけど、勇気がなくてその場に留まっている人たちをグイグイと引っ張っていく漢気をお二人から感じました。取引先の担当者様がおっしゃっていた「free movaさんと取引したことで新しい事業が創出されるかもしれない」という言葉もヒントになっています。

(それぞれのワードにストーリーを添えて提案)

米山:ヒアリングの際に奥深いところまで聞いてくれたからこそ出てきたワードですよね。

廣瀬:それぞれの入社動機、会社に対する思い、将来像などが事細かにヒアリングされて、ここまで深掘っていくのかと驚きました。その膨大な情報量がロジック立ってワードに行き着いているので、納得感があるんです。

■物理の常識すら取っ払う

前田:「境界線のない、世界線を。」というブランドコンセプトに基づくキービジュアルは2案提案し、最終的にはクジラが空を泳ぐ企画に決定しました。もう1案は、リアルな人間とデジタルのキャラクターが同じ空間に共存しているという企画だったのですが、クジラを選んだ理由はどこにありますか?

廣瀬:企画意図も説明してもらったんですけど、感覚的なところが大きいですね。自由さと壮大さが大胆に表現されていて、うちらしいなと感じました。クジラを渋谷の空に泳がせることで、本社が渋谷にあることもアピールできますし。

米山:我々を含めた経営層3名で決めたんですけど、全員一致でしたね。本来海で生きる巨大生物が空を泳ぐというビジュアルは、「境界線のない、世界線を。」というワードと相まって強いインパクトを与えられるんじゃないかなと思いました。

前田:ヒアリングの内容をもとに、free movaさんは学歴や年齢、性別、経験といった様々な境界線を打ち破っていく存在であると定義付けました。このコンセプトを表現するために、あり得ないことが当たり前に起きているビジュアルをダイナミックに表現したいなと。いっそのこと物理の常識すら取っ払ってしまおうという考えから生まれたビジュアルです。

(初回プレゼンで提案したラフイメージ1)
(初回プレゼンで提案したラフイメージ2)

廣瀬:ヒアリングの中で浮かび上がってきた点と点が全部繋がってるんですよね。会社としての意義や歴史、そこで働く個人の思い、取引先の方たちとの関係性などを全て絡めながらブランドを構築してもらえて、感動と感謝の気持ちでいっぱいです。

前田:free movaさんがこれまで掲げてきた「枠にとらわれない人生を」というワードも重要な点になっています。ヒアリングを行った後、これは変えなくてもいいのではないかという考えも一度は過ぎりました。でもこのワードは、人生という単語にも表れているように、個人が対象となっています。社会を対象としたワードにスケールアップさせることで、会社としての気高さを表現したいと思いました。

■映画監督を招聘し、コンセプトムービーを制作

廣瀬:コンセプトムービーもいいですよね。もともと映像は制作する予定でしたが、まさか映画監督を連れて来るとは思っていませんでした(笑)。

米山:そこまでやるのかって思ったよね。

(15秒のティザー映像を作成し、サイトリリース前にSNSで予告)

前田:快く承諾してもらえましたよ。本編だけじゃなくて、ティザー用の映像も作ってもらったんですけど、これもいいですよね。

米山:ロゴも刷新したんですけど、これも気に入ってます。fの文字とインフィニティのマークがうまく掛け合わされていますよね。

(カラーを含めると合計で6パターンを提案。ここからブラッシュアップしたものが最終形に)

前田:3本のラインは、新しく策定した3つのバリューをモチーフにしています。ラインが交差する中央部の意匠には、「人と人の結びつきが根幹にある」というメッセージを込めました。

廣瀬:こうして振り返ってみると、ムービーやロゴを含め、まわりに自慢できるサイトに仕上がりました。今後見られる立場になっていく上で、ブランディングを実施するタイミングとしては最適だったなと改めて実感しています。

米山:MVVを明文化させたことで、求職者に対する意識付けもスムーズに進みそうです。リアクションも楽しみですね。面接では「どうしてクジラなんですか?」って聞かれることも出てきそうですけど、free movaらしさを伝えるきっかけのひとつになると思います。

廣瀬:「どうしてクジラなんですか?」という声は社内からも聞くよね。採用サイトのTOPページで遊んでいる社員もいますよ。

(事業の拡大や新制度の発足に伴って進化する採用サイト)

前田:インナーブランディングにも繋がってるわけですね。時間をかけて作った甲斐がありました。

米山:ブランディングの実施が決まったとき、「1年掛かります」って前田さんに言われたんですけど、最初のうちは意味が分からなくて。「3ヶ月くらいでできるんじゃね?」って思っていたんです。でも、途中から納得しました。これくらい本腰入れてやるなら1年掛かりますね。

廣瀬:時間を掛けた作り込んだ分だけ会社としての芯が強くなったと思います。ステージもワンランク上がったんじゃないかなと。これでさらに自信を持って事業拡大に挑めます。

米山:サイトオープン後の動きとしては、オールインさんには名刺やクリアファイル、タペストリーなどもアイテムも作ってもらっています。求人も引き続きお願いしているし、これからも色々とお願いしたいですね。また変なの持ってきてください(笑)。

前田:斜め90度上の企画持っていきますね(笑)。

法人・個人ともに、
いつでもご相談ください

  • TOP
  • Culture
  • 【ブランディング座談会】なぜクジラは渋谷の空を泳ぐのか